ラム酒は何からできているのか、ご存じでしょうか。主な原料はサトウキビで、その絞り汁や糖蜜からつくられる蒸留酒がラム酒です。
本記事では、ラム酒の主原料であるサトウキビの発祥や栽培地域、サトウキビからラム酒に変わる製造工程、おいしい飲み方までをわかりやすく解説します。ラム酒のつくり方や原料を一通り知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
ラム酒の主原料はサトウキビ

ラム酒の主原料は、サトウキビです。サトウキビの絞り汁や糖蜜が、ラム酒の味わいや香りのもとになっています。
サトウキビのほか、発酵を促す酵母と、酒づくりに欠かせない水もラム酒の重要な原料です。酵母はサトウキビの糖分をアルコールへ変える役割を担い、水は発酵や蒸留といった工程で使われます。サトウキビ・酵母・水の3つの組み合わせで、ラム酒の味わいや個性が決まります。
主原料のサトウキビは、イネ科の多年生植物です。収穫までに1年から1年半ほどかかり、成長すると3メートルほどの高さに達します。堅い皮に覆われた茎の中には糖分が豊富に含まれており、この茎がラム酒や砂糖の原料に使われます。
ここからは、サトウキビの発祥や栽培地域について見ていきましょう。
サトウキビの発祥
サトウキビの原種はニューギニア島周辺で生まれ、紀元前8000年〜6000年頃から栽培されていたと考えられています。その後、東南アジアやインド、中国へと広がりました。
ラム酒の発祥地であるカリブ海域にサトウキビが伝わったのは、1493年のことです。クリストファー・コロンブスが2回目の航海の際、カナリア諸島からカリブ海のイスパニョーラ島にサトウキビの苗を持ち込みました。これをきっかけに、サトウキビ栽培はカリブ地域や南北アメリカ大陸へと広がります。
16世紀初頭にはイスパニョーラ島に最初の製糖工場が建設され、現地を植民地としていたヨーロッパ諸国は砂糖によって大きな利益を得ました。その後もサトウキビは各地で品種改良が重ねられ、糖度の高い品種や病気に強い品種が生み出されていきます。
サトウキビの栽培地域
サトウキビは、世界の約80カ国で栽培されています。適応力が高く、栽培地域は広い範囲に分布しています。
サトウキビ生産においてトップの生産量を誇るのはブラジルで、ブラジルに次ぐ主要な生産地はインド、中国、タイ、パキスタン、メキシコです。
カリブ海地域の国々は生産量こそ多くないものの、ラム酒の原料となる質の高いサトウキビを生産しています。
日本におけるサトウキビ栽培
日本でのサトウキビ栽培は、今から約400年前に奄美大島で始まったといわれています。1609〜1610年頃、奄美大島・大和村の直川智(すなおかわち)という人物が、漂着先の中国・福建省でサトウキビの栽培と製糖技術を学び、苗を秘かに持ち帰りました。その後、直川智は奄美大島で黒糖の生産を開始しました。
現在、日本のサトウキビの2大産地は沖縄県と鹿児島県です。温暖な気候と豊富な日照がサトウキビ栽培に適しており、沖縄ではサトウキビを「ウージ」、奄美群島では「ウギ」とも呼びます。
このほか、和三盆の原料として香川県や徳島県でも栽培されています。千葉県の南房総では、ラム酒づくりのためのサトウキビ栽培も行われています。
ラム酒のつくり方|原料がお酒に変わるまで

ラム酒の製法は次の5つの工程に分けられます。
- サトウキビの加工
- 発酵
- 蒸留
- 熟成
- 瓶詰め
サトウキビからラム酒をつくる工程を、順番に解説します。
サトウキビの加工
ラム酒づくりは、原料であるサトウキビの加工から始まります。洗浄・裁断されたサトウキビは圧搾され、そこから搾り汁を取り出します。サトウキビの糖分は収穫から時間が経つほど減るため、収穫後は新鮮なうちに処理されます。
この搾り汁の処理方法によって、ラム酒は3つのスタイルに分かれます。
- アグリコール:搾り汁をそのまま原料にする
- トラディショナル:搾り汁から砂糖を精製した後に残る副産物の糖蜜(モラセス)を原料にする。別名インダストリアルとも呼ばれ、世界のラム酒の大半を占める
- ハイテストモラセス:搾り汁を加熱・濃縮させたシロップを原料にする
なお、EU規則では「アグリコール」とラム酒に表記できる条件が定められています。EUで「アグリコール」と名乗れるのは、特定の生産地のラム酒に限られ、単に搾り汁からつくっただけでは「アグリコール」と表記できません。
アグリコールの定義や表記ルールについて詳しく知りたい方は、アグリコールラムとは?定義・産地・銘柄・飲み方まで徹底解説を参考にしてみてください。
発酵
サトウキビを加工した後の工程が、酵母を加えて行う発酵です。投入された酵母は糖分を栄養に増殖し、その過程でアルコールと炭酸ガスを生成します。このとき、ラム酒の香味のもととなる成分も生まれ、酵母の種類や発酵環境は、ラム酒の個性に大きく影響します。
酵母を人の手で加えず、発酵場に住み着いた天然の酵母にまかせる自然発酵が行われる場合もあります。自然発酵では、より複雑な風味が生まれます。
発酵を終えた液体は「もろみ」と呼ばれ、アルコール度数は6〜10%程度です。発酵時間は蒸留所によって異なり、1〜2日で仕上げるものもあれば、数日から数週間かけるものもあります。
蒸留
発酵してできた「もろみ」は蒸留され、アルコール度数の強いお酒に変化します。蒸留とは液体の沸点の違いを利用した分離方法で、アルコール分を加熱によって蒸発させて抽出する方法です。使用する蒸留器は「単式蒸留器」か「連続式蒸留機」のどちらかで、蒸留所によっては両方を使い分けるケースもあります。
単式蒸留器は、銅でできた蒸留器です。もろみを入れて加熱し、立ちのぼる蒸気をコンデンサーで冷却します。1度の蒸留で得られる蒸留液はアルコール度数が低いため、2回以上蒸留する場合もあります。連続式に比べて手間と時間がかかるものの、銅の働きによって風味豊かな原酒をつくれます。
連続式蒸留機は、柱状の形をした装置です。単式とは異なり、もろみを連続的に投入できます。短時間で大量に蒸留でき、アルコール度数を効率よく高められるのが特徴です。量産に向いており、比較的ライトでクセのない味わいになる傾向があります。
熟成
熟成は、ラム酒に深みと複雑な風味を与える工程です。ただし、種類によっては熟成を行わない場合もあり、熟成の有無や期間によってホワイトラム、ゴールドラム、ダークラムなどのタイプが存在します。
ホワイトラムは、無色のラム酒です。主にステンレスタンクで短期間休ませることで、風味やアルコールの刺激が落ち着き、軽やかでクリアな味わいに仕上がります。
ゴールドラムは、木樽で熟成させた琥珀色のラム酒です。樽由来の豊かな風味と複雑な味わいが楽しめます。
ダークラムは、ゴールドラムよりも色が濃く、より濃厚な味わいが特徴です。長期の樽熟成によるもののほか、カラメルなどで着色されるものもあります。
ラム酒の分類をさらに詳しく知りたい方は、ラム酒の種類と選び方|製法・産地・熟成・風味別に違いを解説を参考にしてみてください。
瓶詰め
瓶詰め(ボトリング)は、ラム酒製造の最終工程です。熟成を終えたラム酒は、不純物を取り除くために濾過されたうえで瓶詰めされるのが一般的です。なお、ボトリングの前に複数の原酒をブレンドし、味わいを整える銘柄もあります。
大規模なメーカーでは機械で瓶詰めされますが、一部のクラフト蒸留所では手作業で行う場合もあります。コルクやキャップの装着、ラベルの貼付、検品を経てラム酒が完成します。
【比較表】ラム酒と他のお酒との違い

ラム酒の主原料を、他のお酒の原料と比較してみましょう。
主な蒸留酒の主原料を下表にまとめました。
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種類 |
主原料 |
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ラム |
サトウキビ |
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ジン |
大麦や小麦等の穀類 |
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ウォッカ |
穀類、ジャガイモ、 |
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テキーラ |
リュウゼツラン |
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ウイスキー |
大麦やトウモロコシ、小麦などの穀類 |
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ブランデー |
ブドウ |
蒸留酒の味わいと特徴は、使われる原料に大きく影響されます。ラム酒はサトウキビ由来の風味が特徴で、ジンはジュニパーベリーの香りが際立っています。ウォッカはクリアでスムースな味わい、テキーラは多肉植物のリュウゼツラン由来の個性的な風味が楽しめます。
ウイスキーは穀物由来の風味と樽熟成による複雑さを持ち、ブランデーはブドウ由来のフルーティーな風味が特徴です。
ラム酒のおすすめの飲み方

ラム酒は、多彩な飲み方で楽しめるお酒です。
ラム酒そのものの風味を味わうなら、ストレートやロックがおすすめです。軽やかに楽しみたいときは、ソーダ割りや水割りで飲んでみてください。寒い時季には、お湯で割ったホットラムで体を温めるのもよいでしょう。
ラム酒はカクテルのベースとしても活躍します。ラムカクテルの種類は豊富で、人気のモヒートやダイキリ、キューバリブレやピニャコラーダなど数多くのカクテルがあります。
ラム酒の飲み方を詳しく知りたい方はラム酒の飲み方15選|家でおいしく飲むポイントを紹介も参考にしてみてください。
ラム酒に関するよくある疑問と回答

ラム酒に関するよくある疑問とその回答を紹介します。発祥とされる地域や、なぜ「ラム」という名前が付いたのか、その由来を解説します。
ラム酒発祥の国はどこですか?
ラム酒の発祥地は特定されておらず、カリブ海の島国バルバドスとする説が有力です。同じくカリブ海のプエルトリコなど、複数の島が候補に挙げられています。サトウキビの糖蜜を利用したラム酒づくりは、17世紀頃に始まったといわれています。
ラム酒の歴史について詳しく知りたい方は、ラム酒とはどんなお酒?原料・味わいから製法・おすすめ銘柄まで徹底解説 をご覧ください。
ラム酒の名前の由来は?
ラム酒(rum)の名前の由来には、いくつかの説があります。もっとも有力なのが、英語の「rumbullion(ランバリオン)」に由来する説です。イギリス・デヴォンシャー地方の方言であるrumbullionは「大騒ぎ」「騒動」を意味し、強いお酒を飲んで騒ぐ様子を表しています。
このほか、砂糖を意味するラテン語「saccharum(サッカラム)」を由来とする説もあります。
最後に

ラム酒は、サトウキビを主原料につくられるお酒です。サトウキビの搾り汁や糖蜜を発酵・蒸留し、種類によっては樽で熟成させることで、さまざまな風味のラム酒が生まれます。この多様性が、ラム酒の魅力のひとつといえるでしょう。
原料や製法を知れば、ラム酒選びの幅が広がります。自分好みの飲み方で、サトウキビ生まれのラム酒の味わいをじっくりと楽しんでみてください。
