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アグリコールラムとは?定義・産地・銘柄・飲み方まで徹底解説 by TRUCK Japanese Rum

アグリコールラムとは?定義・産地・銘柄・飲み方まで徹底解説 
by TRUCK Japanese Rum

執筆
浅野まむ ライター

TRUCK Japanese RumのWebライティングを担当。元バーテンダーで、認定資格「ウイスキーエキスパート」を所持。 スピリッツ全般の専門知識をもとに記事を執筆している。

監修
善利光雅 TRUCK Japanese Rum 代表

2023年にTRUCK Japanese Rumを設立。企画・原料選定から蒸留設計まで携わるプロデューサー。 和歌山県出身。

アグリコールラムは、サトウキビの搾り汁をそのまま発酵・蒸留してつくられる希少なラム酒です。EU規則上、「アグリコール」と名乗れるのは、フランス海外県(マルティニーク・グアドループ・レユニオン・フランス領ギアナ)とポルトガル領マデイラの、地理的表示(GI)を持つラム酒に限られます。なかでもマルティニーク産アグリコールラムは、世界で唯一のラムのAOC(原産地統制呼称)に認定された、ラムの世界における別格の存在です。

本記事では、アグリコールラムの定義や他のラム酒との違い、主要産地、代表銘柄、おすすめの飲み方などを徹底解説します。初心者の方にも分かりやすく紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

ラム酒の基本を知りたい方はラム酒とはどんなお酒?原料・味わいから製法・おすすめ銘柄まで徹底解説もあわせてご覧ください。

 

アグリコールラム(Rhum Agricole)とは

アグリコールラム(Rhum Agricole)とは、サトウキビの新鮮な搾り汁を発酵・蒸留してつくられるラム酒です。サトウキビ本来の風味がそのまま味わいに反映されており、産地や蒸留所、サトウキビの収穫年といった条件によって味わいが異なります。

原料であるサトウキビの搾り汁は搾った直後から劣化が始まるため、アグリコールラムはサトウキビの栽培地に近い蒸留所で、なおかつ収穫期にしか製造できません。製造できる環境が限られているため、世界のラム酒のなかでも、ごくわずかしか流通していない希少な存在です。

ここからは、アグリコールラムの特徴を紹介します。他のラム酒との違い、アグリコールという名前の意味、そして味わいの3つの角度から見ていきましょう。

ラム酒の原料について詳しく知りたい方はラム酒は何からできている?原料のサトウキビ・製法・おいしい飲み方を解説も参考にしてみてください。


トラディショナルラム・ハイテストモラセスラムとの違い

ラム酒は原料・製法の観点では、大きくアグリコール、トラディショナル、ハイテストモラセスの3つのスタイルに整理できます。スタイルの違いを下表にまとめました。

スタイル

原料

アグリコール

サトウキビの搾り汁を発酵・蒸留する

トラディショナル

サトウキビの搾り汁から砂糖を精製した後に残る、糖蜜(モラセス)を発酵・蒸留する

ハイテストモラセス

サトウキビの搾り汁を加熱し、濃縮させたシロップ(ハイテストモラセス)を発酵・蒸留する

アグリコールスタイルのラム酒は、サトウキビの新鮮な搾り汁を原料にしています。サトウキビジュースを丸ごと発酵・蒸留している点が、他の2つのラム酒と異なるポイントです。

トラディショナルスタイルのラム酒の原料は、サトウキビの搾り汁から砂糖を取り出した後に残る副産物「糖蜜(モラセス)」です。サトウキビの搾り汁を煮詰めて砂糖となる結晶を取り出し、その後に残る糖蜜を発酵・蒸留してつくられます。

もともとラム酒は、サトウキビから砂糖製造の過程で生まれる糖蜜を有効活用するために誕生しました。ラム酒には製糖業とともに発展してきた歴史があり、世界で生産されるラム酒の大半を占めるのが、このトラディショナルスタイルのラム酒です。トラディショナルラムは、別名「インダストリアルラム(Rhum Industriel/工業的なラム)」ともいわれ、これは「砂糖製造の工程」で残る副産物を原料にしていることを表しています。

ハイテストモラセスは、サトウキビの搾り汁を加熱し、水分を飛ばして濃縮させたシロップ(ハイテストモラセス)を原料にしてつくられるラム酒です。砂糖を取り出さない点ではアグリコールスタイルに近く、搾り汁を一度加工してから使う点ではトラディショナルにも似ており、両者の中間に位置するスタイルといえます。

ラム酒の種類を詳しく知りたい方はラム酒の種類と選び方|製法・産地・熟成・風味別に違いを解説も参考にしてみてください。


アグリコールの意味

アグリコール(agricole)は、フランス語で「農業の」「農耕に関する」を意味する形容詞です。アグリコールラムを直訳すれば「農業のラム」となります。

農作物であるサトウキビの搾り汁を直接原料に使うアグリコールスタイルの特徴を、ストレートに表現している名前といえるでしょう。砂糖製造の副産物を原料にするトラディショナルラム(別名:インダストリアルラム=工業的なラム)と、対をなす呼び名でもあります。

なお、「インダストリアル(工業的)」と聞くと工場で大量生産されているラム酒を連想するかもしれませんが、「インダストリアル」「アグリコール」という呼び名は、ラム酒の原料の出自を表しているだけで、生産規模や品質を意味するわけではありません。


アグリコールラムの味わい

アグリコールラムは、ドライな味わいとサトウキビ由来の植物の香りやフレッシュな香りが特徴です。銘柄によって異なるものの、次のような香りや風味があります。

  • ハーブや刈りたての草を思わせる、グリーンでフレッシュな印象
  • 湿った土や大地を連想させる、奥行きのある味わい
  • オレンジやレモン、ベルガモットのような柑橘の爽やかな香り
  • グアバやマンゴーのような華やかなトロピカルフルーツの香り

樽で熟成させたタイプであれば、バニラやスパイス、ドライフルーツのような熟成香が加わり、より複雑な味わいに変化します。


【EU規則】アグリコールの法的定義

EU(欧州連合)では、「ラム(rhum/rum)」や「アグリコール(agricole/agricultural)」と表記するための条件が定められています。この基準を満たさないお酒は、EU域内でこれらの名称を使うことができません。

ここからは、EUにおけるラムの基本定義と、アグリコールを名乗るための要件を紹介します。


ラム(rhum/rum)の基本定義

蒸留酒に関するEU規則では、ラム酒は次のように定められています。

  • 原料は、サトウキビから砂糖を製造する過程で生じる糖蜜(モラセス)、シロップ、またはサトウキビの搾り汁(果汁)であること
  • 原料を発酵させ、アルコール度数96%未満で蒸留すること
  • 製品のアルコール度数は、37.5%以上であること
  • アルコールや香料を添加してはならない
  • 色の調整を目的とする場合に限り、カラメルの添加が認められる
  • 甘味の添加は、最終製品で転化糖換算1Lあたり20gまで認められる

参考:Regulation - 2019/787 - EN - EUR-Lex|ANNEX I「CATEGORIES OF SPIRIT DRINKS/1. Rum

EU規則では、ラム酒の原料から製法、製品の最低アルコール度数、添加物まで厳密に定められています。トラディショナル・アグリコール・ハイテストモラセスを含む、すべてのスタイルのラム酒に共通する基本ルールです。


アグリコールラム(agricole/agricultural)の要件

EU規則において、アグリコール(agricole/agricultural)と表記するには、前項のラムの基本定義に加えて、次の要件をすべて満たす必要があります。

  • 産地はフランス海外県(マルティニーク・グアドループ・レユニオン・フランス領ギアナ)、またはポルトガル領マデイラに限り、地理的表示(GI)であること
  • 原料はサトウキビの搾り汁(果汁)を100%使用していること
  • アルコール度数90%未満で蒸留すること
  • 香りや味わいのもとになる揮発性成分を、純アルコール100Lあたり225g以上含むこと
  • 甘味を添加していないこと

参考:Regulation - 2019/787 - EN - EUR-Lex|ANNEX I「CATEGORIES OF SPIRIT DRINKS/1. Rum

特に重要なのが、最初にある産地の条件です。アグリコールと名乗れるのは、フランス海外県、またはマデイラの地理的表示(GI)を持つラム酒のみです。地理的表示とは、その地域ならではの特性が産地と密接に結び付いた食品等の名称のことで、知的財産権の一種です。GIについては、次の章で詳しく解説します。


アグリコールラムの地理的表示(GI)

地理的表示(GI/Geographical Indication)とは、特定の地域で生産された商品や農産物と生産地との密接な結び付きを認め、その品質を保証する制度です。

知的財産権の一種であり、アグリコールラムに限らずさまざまな食品・農産物が認定されています。有名な例ではフランスの「シャンパン」やイタリアの「パルマハム」、日本では「夕張メロン」「揖保乃糸」などがGIです。


なぜGIが必要?産地と伝統を守る仕組み

GIとは、「その土地ならではの特性や伝統技術があってこそ生まれる品質を守る」ための仕組みです。このGIの基盤にあるのは「テロワール」という概念です。これは、その土地の気候・土壌・地形といった自然環境が、農産物やそれを原料とする産品の味わいに固有の個性を与える、という考え方です。

アグリコールラムの原料であるサトウキビは、たとえ同じ品種でも育つ土地が違えば風味が変わり、できあがるラム酒の味わいに影響します。また、アグリコールラムはサトウキビの新鮮な搾り汁をそのまま使うため、こうしたテロワールの影響が特に表れやすいお酒といえるでしょう。

マルティニークにはマルティニークの、グアドループにはグアドループの個性があり、それは長い年月をかけてその土地の生産者が培ってきた伝統的な製法とあいまって生まれるものです。こうした「土地と伝統が生み出す品質」を保証し、模倣品や粗悪品から製品を守るのがGIの役割です。

仮に別の土地で似た製法のラム酒をつくっても、その土地ならではの個性までは再現できないでしょう。GIは、本物の産地と伝統を保証することで、生産者とブランドの価値を守ると同時に、消費者が安心して本物を選べるようにする仕組みです。


【フランス認定】アグリコールラムのAOCとIG

前章では、アグリコールラムの要件である地理的表示(GI)について解説しました。ここからは、そのGIをめぐる、フランス独自の認証制度について紹介します。

その前に、EUとフランスの制度の関係を整理しておきましょう。ラム酒を含む蒸留酒は、EU規則ではすべて「GI(Geographical Indication)」として登録され、フランス語では「IG(Indication géographique)」と呼ばれます。フランスはこのIGの枠組みのなかに、特に厳格な基準を満たすものを認定する「AOC(原産地統制呼称)」という独自の認証を設けています。

どのような基準か、順に見ていきましょう。


AOC|高品質を示す厳格な基準

AOC(Appellation d'Origine Contrôlée/原産地統制呼称)は、フランスでもっとも厳しい基準であり、製造工程のあらゆる段階が細かく規定されています。これらの基準をすべてクリアしたものだけが、AOCを名乗ることができます。

ラム酒でAOCを取得しているのは、マルティニーク産アグリコールラム(Rhum de la Martinique)だけです。1996年に認定された、世界で唯一のラム酒のAOCです。


IG|より柔軟な基準

IG(Indication géographique/地理的表示)は、EU規則でいうGI(Geographical Indication)に対応する、フランス語の表記です。

産地と品質の結び付きを保証する点はAOCと同じですが、IGPは製造工程の一部が産地と結び付いていれば認定されます。AOCほど規定が厳格ではないため、生産者の裁量の余地が広く、そのぶん多様なスタイルのラム酒が生まれやすい基準といえるでしょう。

IGを取得しているのは、グアドループ、レユニオン、フランス領ギアナのアグリコールラムです。


アグリコールラムの主要産地と特徴

ここからは、アグリコールラムの主要産地と、それぞれの特徴や主要銘柄を紹介します。

EU規則上、「アグリコール」を名乗れるのは、フランス海外県の4地域であるマルティニーク、グアドループ、レユニオン、フランス領ギアナと、ポルトガル領マデイラの、あわせて5つの産地です。

それぞれの産地で製造されたアグリコールラムがどのような特徴を持つのか、順に見ていきましょう。


マルティニーク(Rhum de la Martinique/AOC)

マルティニークは、カリブ海にあるフランス海外県の島です。19世紀末、サトウキビの砂糖産業が傾くと、島の生産者はサトウキビから砂糖をつくらず、搾り汁を丸ごと使うラム酒づくりを始めます。これがアグリコールラムの原点となりました。

製造当初から高い評価を得ていたマルティニークのラム酒は、その評判ゆえに模倣品も出回るようになります。そうした模倣品から本物の産地と品質を守るため、1996年にAOCを取得し、世界で唯一のラムのAOCとなりました。サトウキビの栽培から製法に至るまで、マルティニークのラムはAOCによって細かく規定されています。


サトウキビの栽培

  • 収穫は1月1日から8月31日までの間に行う
  • 収穫量の上限は1ヘクタール当たり120トン
  • 2月1日から伐採日までは灌漑・散水(人工的な水やり)を行わない


製造

  • 発酵は、容量500hlまでの不活性素材(ステンレスなど)のタンクで、バッチ式(回分式)で行う
  • 連続式発酵、密閉式タンクの使用は禁止
  • 蒸留は1月2日から9月5日までの間に行う
  • 蒸留はクレオールコラム(アグリコールラムづくりで用いられるコラムスチル)で行う
  • 蒸留直後のアルコール度数は65%~75%
  • 瓶詰めのアルコール度数は40%~75%


熟成表記

  • Rhum blanc(ラム・ブラン):蒸留後、ステンレスタンクで6週間以上休ませる
  • Rhum élevé sous bois(ラム・エルヴェ・スー・ボワ):オーク樽で12か月以上熟成させる
  • Rhum vieux(ラム・ヴィユー):容量650L未満のオーク樽で3年以上熟成させる(熟成年数によってVO、VSOP、XOなどの等級表示が認められている)


マルティニークの代表的なブランド

  • クレマン(Clément):島東部のル・フランソワにある蒸留所。1887年、医師でありル・フランソワ市長であったオメール・クレマンが砂糖プランテーションのアカジュ農場を取得した。その後、第一次世界大戦のアルコール消耗を機に1917年に蒸留所を建設し、ラムづくりを開始。オメールの死後は息子のシャルルが蒸留所の発展に尽力し、生産設備を近代化。ブランドの確立に貢献した。
  • ラム・ジェイ・エム(Rhum J.M):島の北東部マクーバの熱帯雨林に囲まれた蒸留所。原料のサトウキビを全て自社畑でまかなっている。ブランド名は、創業者のジャン・マリー・マルタンに由来。
  • セント・ジェームス(Saint James):島のサント・マリーにある大規模な蒸留所。蒸留所内には、ラム博物館やクレオール料理のレストランが併設されている。
  • ジェイ・バリー(J.Bally):1917年に所有者となったジャック・バリーが、熟成アグリコールラムをつくった最初の人といわれている。現在は、セント・ジェームスと同じ蒸留所でつくられている。
  • HSE サンテティエンヌ(Habitation Saint-Étienne):ホワイトラムの品質の高さに定評があり、タンクで熟成させた「ブラン2000」をリリースしている。

参考:Rhum de la Martinique | INAOCAHIER DES CHARGES DE L'APPELLATION D'ORIGINE CONTRÔLÉE 「Rhum de la Martinique」


グアドループ(Rhum de la Guadeloupe/IG)

グアドループは、マルティニークの北にあるフランス海外県で、蝶が羽を広げたような形をしています。バス・テール島とグランド・テール島、その南に浮かぶマリー・ガラント島などから成り、複数の蒸留所が点在しています。

グアドループは2015年にIGを取得しており、熟成表記は次のように定められています。

  • Rhum blanc(ラム・ブラン):蒸留後、タンクで3週間以上寝かせる
  • Rhum brun(ラム・ブラウン):オーク材の容器で6カ月以上熟成させる
  • Rhum élevé sous bois(ラム・エルヴェ・スー・ボワ):オーク材の容器で12カ月以上熟成させる
  • Rhum vieux(ラム・ヴィユー):容量650L以下のオーク材の樽で3年以上熟成させる


グアドループの代表的なブランド

  • ダモワゾー(Damoiseau):グランド・テール島にあるベルビュー蒸留所で製造されており、グアドループ島の最大手。
  • ロングトー(Longueteau):1895年、アンリ・ロングトーが創業した家族経営の蒸留所。自社栽培のサトウキビのみを原料にしている。
  • ボローニュ(Bologne):スーフリエール火山の麓に位置する、17世紀起源の古い蒸留所。自社の畑は火山灰地質で、サトウキビ栽培に適した環境。
  • ビエール(Bielle):マリー・ガラント島にある老舗の蒸留所。ホワイトラムに定評がある。
  • ペール・ラバ(Père Labat):マリー・ガラント島のポワソン蒸留所がつくる銘柄。老舗かつ非常に小規模な蒸留所で、1本本が丁寧につくられている。

参考:CAHIER DES CHARGES DE L'INDICATION GÉOGRAPHIQUE 「Rhum de la Guadeloupe」


レユニオン(Rhum de la Réunion/IG)

レユニオンはインド洋上にあるフランス海外県で、マダガスカルから東に位置しています。2015年にIGを取得しており、アグリコールラムだけでなくトラディショナルラムも製造されています。


レユニオンの代表的なブランド

  • サバンナ(Savanna):1870年創業。アグリコールやトラディショナルラムに加え、糖蜜を長期間発酵させてつくるグランアロームを手がけている。
  • イゾティエ(Isautier):1845年創業の、島で最も古い家族経営の蒸留所。アグリコールとトラディショナルラムをつくり、ラム・アランジェ(漬けラム)の生産でも知られている。
  • リヴィエール・デュマ(Rivière du Mât):1880年代創業の、レユニオン島最大の蒸留所。アグリコールラムとトラディショナルラムを手がけている。

参考:Rhum de La Réunion ou Rhum de Réunion ou Rhum Réunion ou Rhum de l'Ile de La Réunion | INAO


フランス領ギアナ(Rhum de la Guyane/IG)

フランス領ギアナは、南米大陸の北東部に位置するフランス海外県です。国土の大半を熱帯雨林(アマゾン)が占めています。

稼働している蒸留所はサン・モーリス蒸留所(Les Rhums Saint-Maurice)ただ一つで、この蒸留所ではアグリコールラムのみを生産しています。2015年にIGを取得しており、熟成によってRhum blanc(ラム・ブラン)、Rhum brun(ラム・ブラウン)、Rhum vieux(ラム・ヴィユー)に分類されます。

サン・モーリス蒸留所では、ラ・ベル・カブレス(La Belle Cabresse)、ラ・カイエンヌ(La Cayennaise)といった銘柄をリリースしています。

参考:Rhum de la Guyane ou Rhum de Guyane ou Rhum Guyane | INAO


マデイラ(Rum da Madeira)

ワインの産地として有名なマデイラは、アフリカ北西の大西洋上に浮かぶ、ポルトガルの自治州です。これまでに紹介した4産地とは異なり、フランス領ではなくポルトガル領ですが、EU規則ではアグリコール表記が認められています。

マデイラの代表的なブランドは、ウィリアム・ヒントン(William Hinton)です。名前の由来は、1845年に蒸留所を建設した創業者です。ヒントン家のラム製造業は一度は途絶えたものの、2006年にヒントン家の子孫がENM社(Engenho Novo da Madeira)を設立し、アグリコールラムを復活させました。

参考:Geographical Indication (GI) - Madeira Rum


EU圏以外のサトウキビジュース100%のお酒(Cane Juice)

ここまで紹介してきたとおり、EU規則上「アグリコールラム」を名乗れるのは、フランス海外県とマデイラでつくられているラム酒だけです。アグリコールと同じ製法のラム酒でも、産地が該当地域以外であれば、EU圏内ではアグリコールを表記できません。たとえ「アグリコール」と表現・表示しているラム酒でも、生産地が該当地域でないかぎり、EU圏内で販売する場合は原則として「agricultural/agricole」を名乗れないのです。

しかし、アグリコールラムのようにサトウキビの搾り汁100%でつくられたラム酒(Cane Juice Rum)は世界各地にあります。また、同じサトウキビが原料でも、ラム酒とは区別された別のお酒として地域で発展した蒸留酒もあります。

ここからは、日本でつくられているサトウキビの搾り汁100%のラム酒(Cane Juice Rum)と、原料は同じでもラム酒と区別される「カシャッサ」「クレラン」を紹介します。


日本|沖縄産クラフトラム

日本のアグリコールスタイルのラム酒(Cane Juice Rum)といえば、サトウキビ栽培が盛んな沖縄が有名です。

代表的なブランドには、グレイス・ラムが手掛けるコルコル(COR COR)があります。南大東島の良質なサトウキビを原料としており、アグリコールスタイルのラム酒は、サトウキビの収穫期に合わせて1年に一度しかつくれません。

日本以外にも、アグリコール スタイルのラム酒(Cane Juice Rum)はタイやハワイなど世界各地でつくられています。なかには「アグリコール」と称している銘柄もありますが、これは、EU規則の及ばない地域でつくられているためです。EU市場に持ちこまれる場合は「Cane Juice Rum(ケーンジュースラム)」などと表記されます。


ブラジル|カシャッサ(Cachaça)

ブラジルには、サトウキビの搾り汁を原料とする蒸留酒があります。それが、ブラジルの国民的なお酒「カシャッサ(Cachaça)」です。ピンガとも呼ばれ、カクテル「カイピリーニャ」のベースとしても知られています。

カシャッサは、アグリコールラムと同様にサトウキビの搾り汁100%でつくられていますが、ラム酒とは明確に区別されています。ブラジルの法律上、カシャッサは「ブラジル産の原料を使い、ブラジル国内で製造」「製品のアルコール度数38~48%」「製品1Lに対して6gまでの加糖を認める」などと定められています。熟成樽にはオークのほか、アンブラーナなどのブラジル原産の木が使われている点も特徴のひとつです。

代表的なブランドには、ウェーバーハウス(Weber Haus)やカシャーサ51(Cachaça 51)があります。


ハイチ|クレラン(Clairin)

ハイチは、カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島の西部を占める国です。このハイチでつくられる伝統的な蒸留酒が「クレラン(Clairin)」です。クレランはサトウキビの搾り汁が原料のお酒ではあるものの、現地ではラム酒と区別され、独自のお酒として親しまれています。

ハイチ国内には500以上のクレランの蒸留所があり、伝統的な製法でつくられています。サトウキビは手刈りで収穫され、発酵は酵母を添加せず、自然に存在する野生の酵母で行われます。

代表的な銘柄はクレラン・ババル(Clairin Vaval)、クレラン・サジュー(Clairin Sajous)などがあり、いずれも造り手の名前がそのまま銘柄名になっています。


アグリコールラムのおすすめの飲み方

アグリコールラムは、サトウキビ由来のフレッシュな風味を生かしたシンプルな飲み方がおすすめです。定番の飲み方と、おすすめのカクテルを紹介します。


ストレート・ロックで個性を楽しむ

アグリコールラムの個性をダイレクトに味わうなら、ストレートやロックがおすすめです。

熟成させていないタイプのブラン(白)なら、ストレートで飲めば原料由来の力強さやハーブの爽やかな香りが強く感じられます。樽熟成させたヴュー(熟成タイプ)なら、複雑な香りや味わいをじっくり堪能できるでしょう。

ロックで飲めば、加水によって少しずつ変化する味わいが楽しめます。ラム酒の全般の飲み方やアレンジ方法を知りたい方は、ラム酒の飲み方15選|家でおいしく飲むポイントを紹介も参考にしてみてください。


伝統的な飲み方・ティポンシュで味わう

ティポンシュ(Ti' Punch)は、アグリコールラムの伝統的な飲み方です。マルティニークやグアドループで親しまれている飲み方で、アグリコールの個性がしっかりと感じ取れるカクテルです。

ここでは、マルティニーク島の伝統的なレシピを紹介します。常温なので、飲みにくい場合は氷を入れる、もしくはラム酒の量を調整するなどアレンジしてみてください。

材料

  • アグリコールラム・ブラン:50ml
  • ライム:1/6〜1/8個
  • きび砂糖:小さじ1〜2

作り方

  1. グラスに常温のアグリコールラムを注ぎ、砂糖を加える
  2. ライムを搾り入れ、よく混ぜる

参考:Ti-punch | AZ Martinique


定番カクテル・モヒートで味わう

フレッシュなアグリコールラムにぴったりのカクテルといえば、爽やかな味わいのモヒートです。ミントの清涼感やライムの酸味が、アグリコールラムの力強い風味に調和します。

基本的にはアグリコールラムのブラン(白)を使用しますが、ヴュー(熟成タイプ)をアレンジするのもおすすめです。

ラム酒のカクテルを他にも知りたい方はラム酒カクテル16選|ロング・ショートのおすすめレシピを紹介も参考にしてみてください。

材料

  • アグリコールラム・ブラン:30〜45ml
  • ライム:1/6〜1/8個(お好みで調整)
  • きび砂糖:大さじ1(お好みで調整)
  • ミントの葉(できればイエルバブエナ):10〜15枚
  • 炭酸水:適量

作り方

  1. グラスにライムを搾り入れ、きび砂糖を加えて混ぜ合わせる
  2. ミントを入れて、香りが立つようにすりこぎ棒などで軽くつぶす
  3. アグリコールラムを注いでクラッシュドアイスを入れ、炭酸水を注いで軽くかき混ぜる


まとめ

アグリコールラムは、サトウキビの新鮮な搾り汁を原料につくられる希少なラム酒です。糖蜜を使う一般的なラム酒とは異なり、搾り汁をそのまま発酵・蒸留するため、草やハーブを思わせるフレッシュな風味が生まれます。

EU規則上「アグリコール」と名乗れるのは、フランス海外県とポルトガル領マデイラの要件を満たしたラム酒だけです。アグリコールと同様にサトウキビの搾り汁100%でつくられたお酒も世界各地にあり、それぞれの土地で親しまれています。

アグリコールラムの魅力は、産地やサトウキビの収穫年によって表れる個性にあります。一般的な糖蜜ラムとは一味違う、サトウキビ本来のみずみずしい風味が味わえるアグリコールラムを、ぜひ体験してみてください。